これからの新規就農者に大切な2つのこと。
よい物を作っているだけで成功するのか?
「よいものを作れば売れる!」なんてことを、いまだに言う人がいますよね。
よっぽど疎いのか、そう願いたいのか、それを言う人のインセンティブがそう言わせているのかはいろいろですが
比較的若い方の中にもそれを言う人がいたりします。
どの業界でも、「よいものだけを作っていたら成功しました!」なんて人、いないと思うんです。
ストーリー的にはよい響きなので、消費者のイメージはGoodだけど、新規農家がそれを鵜呑みにしたらダメ~。
同じようなよい物を作る人がいれば売れないし、農作物という品質などの差・違いが不明瞭化し、
均質化したコモディティー商品では特にその傾向は強いですからね。
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誰が言っているの?
農家として農業界の中にいて、よ~く観察していると
”売る人や流通させる人たち”に、これを言う人が多いようです。僕、個人の意見ですけど。
その人達がどうこうではないのですが、人間の行動、言動の背景には常になんらかの理由がありますから
その人たちが何か特定の言動・行動をとったとき、
その背景にある、要因となるその人のインセンティブシステムも理解しておく必要があると思います。
そうやって言うのは、その人たちが事業を営んでいく上で必要なわけで、
そういう背景があると理解したうえで「よい物を作れば売れる」という言葉を解釈しておかないと
僕たち小さな農家はその言葉と無理心中ということにもなりかねませんからね。
手取り20%の現実。
嫁さんの実家が神奈川県なので、実家に帰郷した際に東京・神奈川の有機野菜を扱うスーパーの
販売価格を定点観察し、そこから出した割合なんだけど、最終消費者(お客)さんが支払う対価に対して
75~80%を小売や流通が取っていて、20~25%を農家が取っている。
例えば、100円のキャベツを例にすれば、45円を小売店、35円を流通業者、20円を農家が取る。
「よい物を作れば売れる」=「農業周辺にいる農家以外の人達が儲かる」ということになり、
使った「時間」と「労力」の対価が一番低くなるのは生産農家ということになる。
そうなると、より稼ぐためには多少のムリをしても、とにかく畑の面積や労働時間を増やさなければならず
時間的余裕や精神的余裕は、なくなってしまう。
そしてそれこそが、新規就農者を減らすひとつの大きな要因でもあると思うのです。
例えば、農家もゲームクリエイターも、何かを作るということでは同じだと思うのだけど
クリエーターが休暇をとりハワイで楽しんできましたというのは、よい物を作るためにもいいね!となる。
農家がそれをやると、なんであいつは遊んでばかりいるんだ!よい物を作るためにもっと働かないんだ!となる。
そしてそれが、同じ農業界の中から出てくるから、まあ~不思議な世界。
同業者が遊んでいる時に自分は働いてるって、僕はワクワクするけどね。
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道の駅90%、カタログ販売52%
さっきの数字の構造から言えば、地元の「道の駅」での販売での農家の取り分が90%。
「道の駅」は農家にも消費者にも「地産地消」でいい。
ちなみに、ヨーロッパでは地産地消は「キロメートルゼロ」と呼ばれている。
肥えた目を持ち、自分の頭で考えて、勉強し、自分の口に入る食べ物を自分で選択している消費者が多い。
おそらくこの「キロメートルゼロ」という言葉は、もうすぐ日本でも耳にするようになると思うよ。
また、流通を間に入れずカタログやネットで、農家と消費者を直接つなぎ販売をしている業者の場合
農家の取り分が約52%になってくる。
中間流通業者を増やさない仕組みを企業努力で作り、
農家を周り、対話をして、仕入れて、マーケティングをして、エンドユーザーに届ける。
これは、これから「地産地消」と同じくらい重要となってくる「知産知消」につながる。
この2つの数字まではいかなくても、20%前後から50%以上に上げないと
農業したい人なんていなくなるよ。ホント。
では、小さな新規農家は何をしなければいけないのか?
農家の取り分の少なくなってしまう複雑な流通も、日本中に食べ物を届けるためには必要な仕組みなんだろうけど
新規農家は自分の作物に自分で価値を付け、自分で売ることもしなければいけない。
そのために必要なのが
「マーケット感覚」と「マーケティングスキル」の2つ。(マーケティングスキルについては、また書きます)
マーケット感覚とは、自分の農作物にどんな価値があるか気づく能力と
誰がその価値を、もっとも高く評価するのかを直感的に嗅ぎわけ、理解できる能力。
具体的には、徳島県の小さな町の「葉っぱビジネス」は有名だよね。
ただの葉っぱを、稼げる価値あるものに変え、
年収1千万稼ぎだすおばーちゃんを生み出した元も、このマーケット感覚。
世の中の消費者が何を求めているのか、まだ気づいていない価値に気付く能力。
もっと言ってしまえば、消費者さえも気づいていない潜在的価値に気づく能力。
僕は、ビジネスの面白さのひとつは、自分で価格を付けられることだと思っているので
自分の農作物の価値に気づき、価格をつけ、世の中(マーケット)にその価値を届けることは
農家が使った時間や、労働の対価に見合う収入を得るためにも、大切なスキルになってくる。
インターネットのおかげで
付加価値を付けた物を世の中に発信することは容易になったんだし、なんの参入障壁もないわけで
農家でも出来ることは沢山あり、あとはやるか、やらないか、だけ。
新時代の百姓には、大切なスキル。
マーケット感覚を磨くためには?!
最近読んだチキリンさんの「マーケット感覚を身につけよう」はオススメ。
○ イケメンが婚活に失敗した理由
○ 今後は公務員こそ安心できないのはなぜ?
○ 市場に評価される方法をどう学ぶ?
○ 失敗と成功の関係を理解する。
などなど、マーケット感覚を鍛える具体的な方法や事例がある。
それと、僕がオススメするのは「旅をすること」。
旅をして、自分の生活圏から定期的に外に出ていろいろな物を見ること。いろんな人に会って話をすること。
できれば海外ひとり旅がオススメです、マーケット感覚以外にもいろんな感覚が研ぎ澄まされる。
最近の、旅をしていて個人的に感じる世界のトレンドは、「正しい食事と身軽な旅」。ワ~オ。
まとめますと
新規就農者はマーケット感覚を鍛えあげて、小さくてもムリをせずに十分に稼げる農業を目指しましょう。
そして、都会でマーケット感覚を鍛えた人達にどんどん地方で起業してほしいし、農業分野に入ってきてほしい。
潜在的価値要素が大きいまま放置されている地方、そして農業で価値を生み出してほしい。
世の中の価値観が大きく変わっている今、
ムリをせずに、精神面、金銭面でのゆとりを持ちながら経営できる小さな農家が増え、その存在が広まれば
補助金だとか助成金以上に、新規就農者へのインセンティブになると僕は考えるのです。
あ。農家にとって「よいものを作る」というのは、当然の当たり前のことね。大前提。
それがあってはじめて、様々なスキルが生きてくるからね。
人参の間引きに行くので、おしまい。
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